

ふだん、お酒はほとんど飲まない。
でも時には、飲みたい気分になることがある。
2023年3月4日の夜は、そんな気分だった。
静岡県富士水泳場で行われた『春季チャンレンジレース』(世界選手権の選考会)で自己ベスト1分5秒56を出し、マンチェスターで開催される世界選手権の代表切符をつかんだ夜だった。
ほっとした気持ちとひと区切りついた気持ちとが相まって、ちょっと祝杯をあげたい気分になった。
微アルコール飲料で、すぐにほろよい気分になりながら、入社からここまでの1年に思いをはせた。
入社して初めてのレースは『第64回神戸市民選手権水泳大会』だった。
僕が入社した2022年4月は、コロナ禍まっただ中で、無観客の試合が続いていた。広報の小澤さんが会場に来て、僕の泳ぐ姿をカメラに収めてくれた。
この大会は、ある意味、自身の分岐点となった。
100m自由形と100m背泳ぎの2種目に出場。自由形は1位だったが、100m背泳ぎでは荻原虎太郎選手に敗れた。この日、荻原選手は泳ぎ方を変えて大会に挑んできた。両足でキックを打つ『バサロキック』は圧倒的なスピードだった。
この日を境に、僕は泳ぎ方を変えた。「人の泳法をマネするなんてプライドはないのか」なんて言う人もいたかもしれないけれど、鷲尾コーチは「勝つやつが正義。マネがどうのとか、そんなプライドはいらない」と言い切った。
そんな言葉にも後押しされ、僕は『バサロキック』を自分のものとするための練習を重ねた。
半年後の2022年9月、横浜国際プールで行われた『ジャパンパラ水泳競技大会』で、その成果が発揮された。100m背泳ぎの予選で1分7秒54と、大会新記録を出すことができた。
この日は入社以来初の有観客試合で、職場のみなさんが応援に駆けつけてくれた。
なんとか結果を出してみなさんの声援に応えたいと思った。プレッシャーはあったけれど、変な緊張はなかった。そこで自己ベストを更新して大会新記録を出すことができたのはとてもうれしかったし、思い出深い大会となった。
年が明けた2023年1月には、1か月間の合宿を組ませてもらい、万全を期して迎えた2023年3月4日の大会だった。
1分5秒56、自己ベスト更新。ようやく世界と戦える、そんな思いに満ちた夜だった。
「金メダルもねらえる位置にいる!」そんな自信を持ってマンチェスターへ乗り込んで行った僕だったが……。
次回は、自信満々の僕が世界大会で得た教訓、そしてパリパラ内定までの日々について語ろうと思う。
入社以降、周りの方々から「大人になった」とほめられることが多くなりました。
立ち振る舞いや、パラ水泳の後輩への面倒見の良さが評価されているように感じます。
競技では日ごろから練習に取組む姿勢、食事、ケアの意識が格段に上がりました。
応援されている自覚や、目標が明確になったことが背中を押してくれているのだと思います。
窪田さんが当社の社員として初めて出場した大会に同行し、写真を撮りました。
水泳大会の撮影自体が初めて。レース開始時間よりも早めに会場に到着し、いろいろな方のレースを観戦しながら、撮影の練習をしました。
もしかしたらレース前は窪田さんよりも緊張していたかもしれません。
一瞬を切り取る難しさを感じつつ挑んだ本番。スタートの瞬間をとらえた一枚を撮ることができてよかったです。