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出向

PROJECT STORY #4

グループの情報共有に、新しい「切り札」を。

ディーラーとの情報共有カード改善プロジェクト

ビジネスに必要な機器や設備を貸し出す、リースというビジネス。「扱えないものはない」と言ってもいいほど領域は幅広いが、ライバルも多い。そうなると、価格やサービスのクオリティはもちろん、信頼関係も大きな武器となる。ディーラー(売り主)であるNTT西日本への売上貢献を通じて、より強固な関係性を築くために佐々木たちが着目したもの。それは、少しアナログにも思える「紙のカード」だった。

RYOYA SASAKI

東京支店
経済学部 経済政策学科 卒
2017年4月:
入社。中国支店に配属され、NTT西日本に対するリース営業を行う。
2020年4月:
東京本社に配属。NTTグループの販売特約店に対するリース営業を行う。

リースの終わりは、チャンスの始まり。

電話機から、航空機まで。NTTファイナンスには、さまざまなリースがある。そして、どんなリースにも期限がある。リース期間の満了は、貸している側にとっては新しいビジネスの機会だ。たとえば新機種への入れ替えを勧めることで、契約を継続できるかもしれない。提案次第では拡大もありえる。もっとも、あっさり打ち切られたり、他社に乗り換えられたりもする。ピンチとチャンスが同時にやってくるそのタイミングを、どこまで生かせるかが勝負だ。

佐々木たちの課題は、まさにその「入れ替え率」にあった。月例の会議でレポートされる数字は、はっきり言って物足りない。つまり、チャンスを生かし切れていない。ほかの数字は悪くないだけに、なおさらもったいなく見える。

少しややこしいが、佐々木たちがにらんでいる「入れ替え率」は、NTTファイナンスの数字ではなくNTT西日本の成績だ。【NTTファイナンスが提供するサービスを】【NTT西日本がディーラー(売り主)となって】【一般企業や官公庁へ届ける】……この3ステップのビジネスモデルが前提にあるためだ。さらにややこしいことに、NTT西日本はほかのリース会社とも付き合いがある。同じNTTグループだからといって、必ずお呼びがかかるわけではない。だからこそ、NTT西日本の「入れ替え率」に貢献して、NTTファイナンスの存在感を高めておきたい。ひいては、NTTグループそのものに対する貢献にもつながる。

それにしても、入れ替え率が低いのはなぜだろうか。

リースの仕組み

使われないカード。

「カードがイマイチなのかもしれない」。そんな声が上がった。「カード」とは、NTTファイナンスが作成してNTT西日本に渡しているツールのことだ。まもなくリース満了を迎える顧客の情報が記載されており、簡単にいえばリマインダーの役目を果たす。ところが、その利用状況が芳しくない。NTT西日本内の注目度は低く、使い勝手を考えてわざわざ紙で作っているのに、営業担当者の手に渡っていないことさえある。「あのカードがしっかり機能すれば……」。

カードを使ってもらえない理由を、佐々木たちは直接、ヒアリングしに行くことにした。普段からよく顔を合わせるNTT西日本の営業担当者はもちろん、関連部署も快く応じてくれた。約1ヶ月を経て、集まった声は実に約60名分。それらを俯瞰してみると、大きく2つの問題点が見えてきた。

ひとつは構成。たとえばカードには約20個の項目があるが、せいぜい1個か2個の閲覧に留まっていることがわかった。似たような項目が多かったり、逆に関心の高い内容が項目化されていなかったりしたためだ。もうひとつは、顧客データの古さ。NTT西日本から収集したデータにタイムラグや抜け漏れがあり、結果的に不正確な状態で記載されていることがあった。それではカードの価値がない。

構成は自分たちの手で修正することができる。やっかいなのは顧客データだった。完全に正確な情報を記載するには、NTT西日本からデータの提供を受けるしかない。その前例はないが、ほかに方法もない。佐々木たちは、先方の担当部署である営業推進部へ交渉に向かった。

顧客データを巡る攻防。

「うちの顧客データを渡してもいいものかどうか……」。それが、NTT西日本・営業推進部のリアクションだった。予想通りではあった。どんな業界であっても、常識として顧客データは門外不出だ。戦略的にもコンプライアンス的にも極めてハードルが高く、グループ会社だからといってそれが下がることはない。

「まあ、そうだよな」。肩を落とした佐々木たちだったが、望みがないわけではなかった。NTT西日本・NTTファイナンス間で結ばれている契約に「顧客データを渡してもよい」と解釈できる部分があれば、胸を張って交渉を再開できる。ただ、そんな部分があるのかないのか、誰も知らない。契約書は途方もない分厚さで、その全貌を把握している者など一人もいない。というわけで、佐々木は自ら、契約書の条文をひとつひとつ確かめることにした。データとして保存されている契約書をプリントアウトし、関係のありそうな部分にマーカーを引いていく。気の遠くなるような作業だ。集中力はすぐに途切れるし、目も手もくたびれる。

だが、苦労の甲斐があった。顧客データの共有を認める条文へとたどりつくことができたのだ。これでルール上の制約はなくなった。さらに追い風になったのは、NTT西日本の営業担当者たちから寄せられた声だ。「入れ替え率」の向上に対する期待の声を、佐々木たちは集めて営業推進部に届けた。こうした積み重ねが実を結び、晴れて顧客データが提供されることになった。

佐々木のある一日

8:00
販売特約店の朝礼に参加。販売担当者との情報交換や案件相談の後、拠点長へのリース状況報告。
10:00
メールチェック。エンドユーザーのリース状況や審査状況など、販売特約店からの問い合わせに電話で応対。
12:00
昼食。本社が入るビル3階のレストランフロアで食べたり、同期とお弁当を囲んだり。
13:00
新しく着任した上長に、訪問予定の販売特約店について知らせるためのレクチャー資料作成。
16:00
販売特約店へ赴いてリース契約書の回収。メールでのやりとりも可能だが、直接会うことでコミュニケーションの機会をつくり、情報収集に役立てる。
17:30
事務処理。
18:00
退社。

「幸せになれたよ」

「カードが新しくなりました。ぜひ使ってください」。NTT西日本の担当拠点を訪問するたびに、佐々木はそう言い添えることを忘れなかった。最初のヒアリングから数えると約3ヶ月。試作を繰り返してようやく完成した自信作だ。とはいえ、すぐに効果が現れるとも思っていなかった。「存在が浸透して、活用されて、数字として出るまで1年は見ておいたほうがいい」。それがチームの見立て。

ところが、実際の成果はそれよりもずいぶん早く出た。半年を過ぎたあたりで、担当エリアのリース利用率が前年比で数%ずつ上昇。その傾向はとどまることなく、ついには、目標数値で見れば達成率500%という異常値を叩き出す拠点さえ現れた。NTTファイナンス内でもこの取り組みは高く評価され、さまざまなエリアに横展開できるソリューションとして表彰を受けた。

「カードはあくまでもきっかけに過ぎない。結果を出せたのは、営業担当のみなさんの力」。佐々木はそう言い切る。その佐々木が特に印象に残っているのは、大きく成績を伸ばした拠点の営業担当から「拠点が幸せになれたよ」と声をかけられたことだという。ディーラーとの信頼関係は、リースというビジネスの核心。だからこそ喜びの瞬間も、人と人とのやりとりの中に生まれるのかもしれない。