2023/5/23
2023/5/23
さまざまな分野でDXによる業務の効率化や生産性の向上が叫ばれるなか、経理部門も例外ではありません。なぜ経理のデジタル化が必要とされているのか、その理由について解説します。
働き方の多様化とテレワークへの対応
これまでの経理業務は、仕訳計上の証跡として主に紙媒体の書類をベースに行われてきました。しかし、働き方改革やコロナ禍によって状況は一変。他部門同様、経理部門にも自宅などオフィス以外の場所で業務ができる体制が整えられ始められました。出社を前提としない働き方を実現するため、会計書類の電子化やデジタルツールの導入をはじめとする業務の改善が進められています。
属人化リスクの回避
経理業務は、専門的な知識を持つ社員を中心に業務を行うことから属人化しがちな職種であるといえます。そのため、担当者の異動や退職などの際に、業務の引継ぎがうまくいかないケースも少なくありません。デジタルツールを導入することで経理業務を「見える化」し、業務の内容や仕事のやり方を共有することで、属人化によるリスクを回避しやすくなります。もちろんデジタルツールを導入すれば属人化が解消されという単純な話ではありません。現状業務の棚卸しから、一定程度の業務フローの可視化・組織内の共有を行ったうえで、ツールを導入することで、大きな効果を得ることができます。
「攻め」の経理への転換
日々の経費精算や出入金管理、出納などは会社を支える重要な業務ですが、正確な実施が前提となる「守り」の業務にあたるとも言えます。こうした基本的なルーティン業務は、デジタルツールの導入で効率化が可能です。効率化によりリソースに余裕ができれば、より深い経営分析や、新規事業開発といった「攻め」の業務に注力することができます。
ほかにも、近年ではペーパーレス化や賃金のデジタル払いなど、法令や時代の変化に応じた業務体制の整備が求められており、今後も経理業務のデジタル化は、さらに広がることが予想されています。
経理業務の効率化やコスト削減につながるデジタルツールは数多くあります。ここではその中から代表的なものを紹介します。
電子帳簿保存システム(請求書・帳簿の電子化)
電子帳簿保存システムとは、請求書や帳簿などの国税関係書類を電子的に保存するためのシステムです。これらの書類を電子化することで、紙で授受していた請求書などを電子ファイルに置き換えることができます。電子化によって、郵送の手間や通信費、印刷費、書類の保管スペースなどが削減でき、さらに文書の検索性の向上による業務効率化や機密情報におけるセキュリティ強化にもつながります。
ワークフローシステム(稟議書の電子化)
ワークフローシステムとは、組織内の稟議書を電子化し、申請から承認という一連のワークフローを効率化できるシステムです。備品購入をはじめとする、さまざまな紙ベースの稟議業務をオンライン上で行うことで、決裁までの流れがスムーズになるだけでなく、テレワークなどの働き方に対応することが可能となります。
電子契約システム(契約書の電子化)
電子契約システムとは、紙の契約書を用いず、電子的に作成した契約書に電子署名やサインを付与することで、契約を締結できるシステムです。ほかの電子書類同様、印刷や製本、押印などの作業がなくなるので、業務効率が向上、印紙税が不要になるためコスト削減にもつながります。
経費精算システム
経費精算システムとは、従業員が使用した立替経費などを電子的に申請、承認、支払管理まで行えるサービスです。領収書の添付なども税法上の要件を充たすことで原本保存が不要になるなど全社的な導入メリットの大きいツールです。
BIツール(経営分析・見える化)
BI(ビジネスインテリジェンス)ツールとは、企業に蓄積された大量のデータを分析し、「見える化」するツールです。経理業務で活用することで、原価や業績報告、決算データなどの分析を効率化・高度化することができます。経営情報の可視化により事業計画・予算策定、実施状況、財務数値などを統合して分析、問題発見や解決を支援するものです。データ分析やレポーティング、予測モデリングなど経営活動の改善に役立つ機能が多数搭載されています。
経理業務におけるデジタルツールの導入は、従来の業務を効率化させ、働きやすさや生産性の向上につながります。しかし、デジタルツールにはブラウザ上で手軽に利用できるサービスもある一方で、製品によって機能はもちろん、導入・運用の難易度が異なります。
特に電子契約システムや稟議書の電子化などの運用には、従来行われていた業務の流れを見直す必要があるため、専門的な知見が必要な場合があります。デジタルツールの運用で失敗をしないためにも、まず自社の経理業務を棚卸ししてから、導入を検討するべきでしょう。
ひとくちに経理業務のデジタル化といってもその方法はさまざまです。デジタルツールを導入したところで、「使われない」「使いこなせない」「成果が出ない」という結果では、せっかくの投資が無駄になってしまいます。自社が取組むべき課題を明確にした上で、本当に必要なデジタルツールの導入について検討を進めていくことが大切です。