Vol.015Road to Paris マンチェスターでの収穫

2023年8月1日、『マンチェスター2023WPS世界選手権』の会場となったMANCHESTER AQUATICS CENTREは、大きな歓声に包まれていた。

第4レーン、トップで折り返し、残り25m。
2位の選手が視界に入ってきた。追い上げられて、少し力んだ。
そして……2着。
銀メダルと、パリパラリンピックの背泳ぎ100m(S8クラス)の日本代表出場枠1つを獲得して、僕は大会を終えた。

3月の春季チャレンジレースで自己ベスト(1分5秒56)を出し、自信を持って臨んだ大会だった。目標は「金メダルとパリパラリンピックの出場内定」と意気込んでいた。

レース前半の折り返しは30秒89で、自己ベストを出した3月のレースよりも早かった。
「前半突っ込んで、後半逃げ切る」という、僕が得意とするレースプランどおりのはずだった。
ところが、逃げ切りに入った後半に追い上げられ競る展開が待ち受けていた。

これまであまり経験したことのない展開になったことで、ほんの少しの焦りとほんの少しの力みが出た。それが、無意識のペースアップとなった。ふだんギアをあげないところであげてしまったことで、最後までスタミナが持たなかった。
あと一歩で、金メダルと代表内定が僕の手をすり抜けていった。

自分で掲げた目標には届かなかったが、世界2位という結果をポジティブにとらえ、この大会から得た教訓をもとに、鷲尾コーチとトレーニング方針を修正していった。
後半競り負けないスタミナとメンタル。課題ははっきりしている。
スタミナ強化、ウエイトトレーニング、ポジションの調整、ターン後の潜水、ギアを上げるタイミング、競った時の泳ぎなど、多角的に検証し、練習を積み重ねていった。

9月のジャパンパラ水泳競技大会、10月の杭州2022アジアパラ競技大会、11月の日本パラ水泳選手権大会。国内外でコンスタントにレースに出場し、世界の頂点をめざすために足りないものを模索し、それらと向かい合ってきた。

そして迎えた2024年3月9日、パリパラリンピックの代表選考会となる『春季チャレンジレース』に挑んだ。

鷲尾コーチ談

マンチェスター世界選手権では2位に終わってしまいました。もちろん満足のいく結果ではありませんが、得たものも多くありました。
窪田君は、目標に向かって日々の積み重ねができるという強みがあります。この経験を活かし、チャレンジャーとしてパリの頂点をめざしていきます。

マンチェスター2023WPS世界選手権で手にした銀メダルを持つ窪田さんと鷲尾コーチのツーショット
世界選手権で手にした銀メダル
窪田幸太 公式インスタグラム窪田幸太 公式インスタグラム