インボイス制度とは?影響や対策を事業者別に完全ガイド
「インボイス制度って何だろう?」
「インボイス制度に対応した請求書の内容が知りたい」
と思うことはありませんか?
インボイス制度とは、指定要件を満たした請求書や納品書などを発行・保存することです。
本記事では、
インボイス制度の意味や導入目的
事業者別に必要な対策
請求書に追記すべき内容
インボイス制度と現行制度の違い
などを紹介します。
なお、請求書関連で企業が抱える悩みには、管理・支払い業務もあります。毎月発生する請求書処理の煩雑さに、頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
そのような場合には、請求書管理業務を効率化する「法人"ビリングONE"」がおすすめです。詳しくは下記のボタンから、お気軽に資料をダウンロードしてください。
目次[非表示]
インボイス制度とは?意味や導入の目的をわかりやすく紹介
インボイス制度とは、適格請求書(インボイス)を用いて事業者が本来納めるべき消費税額を明らかにするための制度です。
「適格請求書」とは、下記の内容をまとめた請求書のことを言います。
|
簡単に言うと、適格請求書とは「これまでの請求書に『インボイス制度で必要な情報』を追記した請求書」です。
インボイス制度が導入された背景
インボイス制度が導入された背景は「顧客から支払われた消費税が、国に納められず事業者の利益となってしまう構造」を防ぐためです。
例えば、税込11万円の報酬を受け取った場合、本来事業者が得られる利益は消費税1万円を引いた10万円です。
しかし、消費税を納める必要のない事業者(※)の場合は、11万円がそのまま利益となってしまいます。
この構造を解消するべく、事業者が支払う消費税を明確にするために、インボイス制度が導入されることとなりました。
※法人の場合:前々事業年度の課税売上高が1,000万円以下の事業者
個人の場合:前々年の課税売上高が1,000万円以下の事業者
仕入税額控除を受けるためには適格請求書の発行・保存が必要
インボイス制度の導入で大きく関わるのが「仕入税額控除」です。
「仕入税額控除」とは、預かった消費税から自分が支払った消費税を控除することを指します。
仕入税額控除を受けることで、事業者は国に納めるべき消費税額を少なくできます。
小売店を例にすると、2,000円の消費税を支払って商品を仕入れ、お客さんから5,000円分の消費税を受け取った場合、国に納める消費税額は「5,000円-2,000円=3,000円」です。
この「2,000円分、支払う消費税額からマイナスできる(控除できる)」仕組みを、仕入税額控除と言います。
インボイス制度の導入後、事業者が「仕入税額控除」を受けるためには適格請求書でのやり取りが必須です。
適格請求書のフォーマット以外でのやり取りだった場合、仕入税額控除は受けられず、税金を多く払うことになってしまいます。
仕入税額控除を「受けられる場合」「受けられない場合」では、大きな差が生まれます。
違いを表にまとめました。
仕入税額控除を受けられる場合 |
仕入税額控除を受けられない場合 |
|
お客さんから預かった消費税 |
50,000円 |
50,000円 |
仕入先へ支払った消費税 |
20,000円 |
20,000円 |
税務署へ支払う消費税 |
50,000円 - 20,000円 = 30,000円 |
50,000円 - 0円 = 50,000円 |
上記のとおり、仕入税額控除が受けられるかどうかで「税務署へ支払う消費税額」に大きな差が生まれます。
適格請求書を発行できるのは「適格請求書発行事業者」に限定される
インボイス制度で仕入税額控除を受けるにあたって必要な「適格請求書」は、どの事業者でも発行できるわけではありません。
「適格請求書発行事業者」として国に申請し、認められた事業者のみが適格請求書を発行できます。
つまり、「適格請求書発行事業者」に登録しないと発行できません。
さらに、「適格請求書発行事業者」になるためには、事前に「課税事業者」になっておく必要があります。
「課税事業者」とは、消費税の納税を義務付けられた法人・個人事業主のことです。
すでに「課税事業者」になっている場合は、税務署へ登録申請することで「適格請求書発行事業者」として認めてもらえます。
一方で、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の「免税事業者」は、インボイス制度の開始までに「課税事業者」になるorならないの選択が迫られています。
課税事業者にならず、免税事業者を続ける場合、発注者は仕入額控除を受けることができず、消費税を多めに支払わなければなりません。
そのため「免税事業者とは取引をしない」という発注者が増えていくことが予想されます。
【ここまでのまとめ】
|
インボイス制度導入に向けて「受注者」が必要な対策
インボイス制度導入に向けて受注者に必要な対策は、事業者ごとに異なります。ここからは、下記2つの立場で必要な対策をそれぞれ紹介していきます。
課税事業者 |
消費税の支払いが必要な事業者のこと。 |
免税事業者 |
消費税の支払いが免除されている事業者のこと。 |
制度が始まる直前に慌てることがないよう、できる対策から進めていきましょう。
課税事業者がとるべき対策
課税事業者が受注者としてとるべき対策は、次のとおりです。
【インボイス制度導入に向けて課税事業者(受注者)がとるべき対策】
|
インボイス制度に対応するには「適格請求書発行事業者」の登録申請をおこなう必要があります。
また、現在使用している請求書のソフトや会計ソフトが、インボイス制度に対応しているか確認することもポイントです。
もし非対応であれば、機能をアップデートするなど事前準備が求められます。
免税事業者がとるべき対策
続いて、免税事業者が受注者としてとるべき対策は下記のとおりです。
【インボイス制度導入に向けて免税事業者(受注者)がとるべき対策】
|
免税事業者は、自社の状況や取引先との関係も考慮したうえで、「課税事業者」になるか「免税事業者」になるか判断しなければなりません。
インボイス制度下で、発注側が仕入税額控除を受けられるのは「適格請求書発行事業者との取引」に限定されます。
そのため、適格請求書発行事業者に該当しない「免税事業者」との取引は敬遠される可能性がある点に注意が必要です。
簡単に言うと、適格請求書を発行できる事業者としか取引したがらない発注者が出てくるかもしれません。
もし、免税事業者が課税事業者になりたい場合は「適格請求書発行事業者」の登録申請をおこなう必要があります。
その際、「消費税課税事業者選択届出書」も提出します。
ただし、2023年10月1日から2029年9月30日までの属する課税期間中に登録を受ける場合、適格請求書発行事業者の登録申請書に登録希望日を記載すれば「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要はありません。
インボイス制度導入に向けて「発注者」が必要な対策
ここからは、インボイス制度導入に向けて発注者に必要な対策を紹介します。
【インボイス制度導入に向けて発注者に必要な対策】 |
取引している免税事業者の数を把握
真っ先に実施したいのは、取引先のうち免税事業者がいくつあるのかを把握することです。
把握する方法の一例としては、次のようなものが挙げられます。
- チャットや手紙などを利用して各社個別に質問する
- まとめてアンケート調査を実施する
請求書に記載の消費税額を確認(「税込」or「消費税なし」)
請求書に記載の消費税額を確認し、「税込」だった場合は今後取引先との値下げ交渉が迫られます。
なぜなら、インボイス制度下では、適格請求書発行事業者以外の仕入れ先へ支払う消費税に関しては、仕入税額控除を受けられないからです。
この「仕入税額控除を受けられない部分」の支払いをどこまで減らすか、発注者は調整が求められます。
もし請求書に記載の消費税が「消費税なし」だった場合は、今後も「消費税なし」のまま対応すれば問題ありません。
免税事業者との取引の検討
取引先が適格請求書発行事業者ではない場合、適格請求書を発行してもらえません。
そのため、発注者は下記2パターンの対策を考える必要があります。
- 取引先に適格請求書発行事業者になってもらう
- 取引先を変更する(見直す)
すべての取引先が適格請求書発行事業者に登録すれば問題ないのですが、それぞれの事情があるため、「制度開始後も免税事業者を選択する事業者」の存在が予想されます。
とはいえ、適格請求書発行事業者になってもらうことを無理やり押し付けるわけにはいきません。
そこで覚えておきたいのが、「経過措置」の存在です。
経過措置とは、インボイス制度の開始後いきなり仕入れ税額控除が完全廃止されるのではなく、下記のとおり段階的に廃止される措置のことです。
【経過措置を適用できる期間など】
|
しかし、課税事業者にとって免税事業者との取引は損してしまうことに変わりありません。
加えて免税事業者分を分けて計算しなくてはならないため、手間になることも事実です。
自社の状況や相手との関係性も考慮しつつ、免税事業者との取引をどのようにしていくのか、よく検討することが大切です。
インボイス制度と旧制度には大きく2つの違いがある
前述した内容と重複する箇所はありますが、インボイス制度と旧制度の違いを紹介します。
違いをよく理解しておきましょう。
違い1.仕入税額控除を受けられる範囲
インボイス制度導入後は、仕入税額控除の手続きが変わりました。
仕入税額控除の手続き |
|
2023年9月30日まで |
区分記載請求書等保存方式 |
2023年10月1日以降 |
適格請求書等保存方式(インボイス制度) |
具体的には、従来の「区分記載請求書等保存方式」から「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」へ変更になっています。
つまり、2023年10月1日以降、仕入税額控除を受けられるのは「適格請求書発行事業者である課税事業者」のみです。
免税事業者は仕入税額控除を受けられないため、課税事業者になるか、変わらず免税事業者のままでいるか選択が求められています。
違い2.請求書に記載すべき内容
2つ目の違いは、請求書に記載すべき内容です。
国税庁によると、インボイス制度導入後は現行の「区分記載請求書」に下記3つの記載項目を追記しなければなりません。
【インボイス制度導入後に現行の請求書に追記すべき3つの記載項目】
|
もしExcel(エクセル)などを利用して請求書を作成している場合、ご自身で上記の項目を追加する必要があります。
一方で、クラウド上の請求書サービスを利用している場合、アップデートなどで自動的に対応してくれることがほとんどです。
なお、一部の取引においては、インボイス制度の開始後も適格請求書の交付義務が免除されるケースがあります。
詳しくは「Q4.適格請求書を発行しなくても良いケースは?」で紹介していますので、参考にしてください。
インボイス制度に関してよくある5つのQ&A
インボイス制度に関してよくある質問とその回答をまとめました。
気になったものだけ、参考にしてみてください。
Q1.インボイス制度はいつから始まる?
インボイス制度は、2023年10月1日から始まりました。
対応が不十分な方は、本記事の内容も参考にできる対策から進めてみてください。
>>>インボイス制度導入に向けて「受注者」が必要な対策はこちら<<<
>>>インボイス制度導入に向けて「発注者」が必要な対策はこちら<<<
Q2.適格請求書発行事業者に登録しないとどうなる?
適格請求書発行事業者に登録しない場合、適格請求書を発行できなくなります。適格請求書発行事業者としての証明には、登録番号の提示が有効です。
登録番号は税務署で発行してもらえますので、要件に応じて次の書類を提出しましょう。
要件 |
必要な書類 |
課税事業者になる |
消費税課税事業者選択届出書 |
適格請求書発行事業者になる |
適格請求書発行事業者の登録申請書 |
Q3.個人事業主(フリーランス)はどう対応すべき?
個人事業主(フリーランス)は、取引先との状況を踏まえつつ、自分が課税事業者になるか免税事業者のままでいるか検討が必要です。
メリット |
デメリット |
|
課税事業者 |
・適格請求書を発行できる |
・消費税の納税義務が発生する |
免税事業者 |
・消費税の納税義務が発生しない |
・適格請求書を発行できない |
免税事業者は、適格請求書の発行ができません。
取引先からすると、適格請求書を発行してもらえない場合は「仕入税額控除」が受けられないことを意味します。
つまり、課税事業者が損することになるため「免税事業者とは取引しない」と判断される可能性があります。
結果として、個人事業主(フリーランス)の取引・売上が減る恐れがあることは想定しておかなければなりません。
一方で、「課税事業者」になると当然、消費税の納税義務が発生します。
純粋な売上低下につながるため、「課税事業者」になるか「免税事業者」のままでいるかは慎重に判断しましょう。
Q4.適格請求書を発行しなくても良いケースは?
適格請求書を発行しなくても良いケースは、次のとおりです。
【適格請求書の交付義務が免除される取引】
|
参考:交付義務の免除|国税庁
これらのケースでは、事業の性質上、適格請求書の交付が困難であることから法律で交付義務が免除されています。
事業内容が「交付義務が免除される取引」に該当する場合、適格請求書を発行する必要はありません。
Q5.簡易課税制度とは?
簡易課税制度とは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下である「中小企業」の事務負担を軽減する目的で作られた制度です。
そもそも消費税の申告は「原則課税」「簡易課税」の2つがあり、事業者はどちらかを選んで納付する税額を計算します。
簡易課税を選択する場合、預かる消費税額はそのままに、支払った消費税額を「みなし仕入率」を使って計算することが可能です。
簡易課税制度で用いられる具体的な計算式は、下記のとおりです。
消費税額=預かった消費税額ー(預かった消費税額×みなし仕入率) |
なお、「みなし仕入率」は業種ごとに異なります。
例えば、第1種事業に該当する「卸売業」のみなし仕入率は90%ですが、第6種業種に該当する「不動産業」では40%です。
簡易課税を選択するためには、年度が始まる前に届出が必要です。簡易課税を選択すると2年間は継続適用となるため、途中変更ができないことは留意しておきましょう。
また、事業者の状況によって「原則課税」と「簡易課税」のどちらがお得なのかは異なるため、実際にシミュレーションしてみるのがおすすめです。
インボイス制度を理解して正しく請求書を発行しよう
【本記事のまとめ】
|
インボイス制度はすべての事業者に影響するため、制度を理解して必要な対策を講じることが重要です。
なお、課税事業者には請求書の見直しも求められます。これを機に、請求書管理業務を効率化するサービスを導入されてみてはいかがでしょうか。
NTTファイナンスの「法人"ビリングONE"」は、毎月バラバラに届く通信費や公共料金などの請求書を、お客様に一括で請求するサービスです。
分散しがちな請求書を1枚の電子請求書(紙請求も可)に集約できるため、月々の支払い処理を1回で済ませられます。
詳しくは下記のボタンから、お気軽に資料をダウンロードしてください。