PROJECT STORY #5

信頼される分社化を、財務から支える。

会社分割プロジェクト

写真:イメージ

2020年に設立された「NTT・TCリース」。NTTファイナンスの祖業であるリース事業と、グローバル事業の一部を分社化して生まれた新会社だ。会社を分けることは、財務諸表を分けること。そして、2社分の税務申告を行うこと。社内的には前例のないこの取り組みに、シビアなタイムリミットのもとで挑む。

原大貴の近影

DAIKI HARA

財務事業本部 アカウンティング部
財務会計部門
※所属は取材当時のものです。
法学部 経営法学科 卒
2011年4月
入社。関西支店へ配属。大阪府の一般リース担当として、一般企業に対するリース営業を行う。
2015年4月
現職。リース事業に係る決算業務を担当した後、現在はNTTファイナンスおよびNTT・TCリースの税務申告業務を担当。

舞い込んだ、分社化のニュース。

はじまりは、NTTと東京センチュリーの資本業務提携だった。

NTTは、言うまでもなくNTTグループの持株会社。東京センチュリーは、リースを祖業とする金融企業である。資本業務提携の目的は、リース・ファイナンス事業の強化。その第一弾として、NTT、NTTファイナンス、そして東京センチュリーの3社で新会社を立ち上げることになった。それまでNTTファイナンスが手がけていた、リース事業とグローバル事業の一部を分社化する形だ。

会社が分かれる時には、財務諸表も2つに分ける必要がある。そのうえで会社ごとに決算書を作成し、税務申告を行う。分社化の情報が原たち社員のもとへ届いたのは2020年2月。そして、新会社の営業開始は7月にセットされていた。決算の開示タイミングを考え合わせると、8月には2つの決算書ができていなければならない。このプロジェクトに大急ぎで取り組んだのが、原をはじめとする決算担当のメンバーたちだった。

写真:仕事中風景

力を合わせて、会社を分ける。

財務諸表を分割し、税務申告を2社(NTTファイナンスと新会社)それぞれに実施する……。ゴールは明確だったが、まず壁になったのは、そもそも何をすればいいのかがわからないことだった。原も上司もほかのメンバーも、分社化に携わったことなどない。以前から契約している税理士法人も、その方面の経験値は高くない。

幸い、分社化にあたって経営層とやりとりをしていたコンサルティング会社と知り合うことができた。そこからさらに、会社分割に詳しい税理士法人を紹介してもらう。その指導とアドバイスを受けて、やるべきことを洗い出す。さらに、プロジェクトの体制も整える。分社化という特殊な事情ができたからといって、通常の決算や税務申告業務がなくなるわけではない。つまり、いつもの業務に完全にオンする形で、会社分割を進めなければならない。「分ける」ための業務は、新しく紹介された税理士法人に。そして、分けたあとの申告業務は従来の税理士法人に、それぞれ手を借りることになった。

強力な援軍を得たものの、社内のメンバー数はこれまで通り。仕事量は目に見えて増えた。時間外勤務へと持ち越す日も目立ち始めた。定時上がりが基本のNTTファイナンスでは、異例のことだと言ってもいい。

分社化の図
写真:仕事中風景

イレギュラーを、スケジュール通りに。

いつも通りの決算と税務申告なら、もちろん原たちも習熟している。だが会社を分けるとなると、まず「その数字はどちらの会社のものか」を見定めなければならない。もしも片方で間違えれば、もう片方も自動的に間違える。すると、分社化がスムースに行われないばかりか、税務申告という社会的責任が正しく果たせない。

たとえば、リース事業においてクライアントへ貸出中の資産。これなら話はシンプルだ。リース事業は新会社へ移ることが決まっているので、そっちの資産だと割り切ってしまって差し支えない。しかし、その判断がつきにくい項目も大量にある。取引ごとに、関連部署や担当者に確認を行わなければならない。

もうひとつ大変なのは、分社後のNTTファイナンスが、NTTの100%子会社となることだった。それによってNTTファイナンスは、名実ともにNTTグループ向けの機能提供会社となる。ただ、そのタイミングで一度、確定申告を行わなければならない。つまり年度末でもないのに、確定申告のためのデータ抽出や資料収集を、関係各所に依頼する必要があるのだ。原はあちこち事情を説明して回り、協力を取り付けていった。

こうした業務のすべてが、シビアに定められたスケジュールの中で動いていた。こなすべき膨大な項目をまとめた線表をにらんでは焦る気持ちを抑えながら、原たちは奮闘を続けた。

写真:仕事中風景

原のある一日

9:30
出社、メール対応。
10:00
ミーティングにて、各担当者の進捗状況の確認。
11:00
打合せに向けて議題項目の整理。
12:00
ランチ。
13:00
税理士法人と決算および申告に関する打ち合せ。
15:00
決算に向けての資料作成。
17:00
翌日以降の業務課題の整理、メール対応。
18:00
退社。

財務のプロフェッショナルへ。

2020年7月1日。新会社「NTT・TCリース」は、予定通りに営業を開始した。

それを追うように、財務諸表の分割と税務申告も、期日を完璧に守って実行された。「正直なところ、ずっと時間に追われながら『大丈夫かな』と思っていた」。そう原は打ち明ける。「手応えを感じるヒマもなかった。どうにかやり遂げたその時になって、初めて達成感を覚えることができたのかもしれない」。

このプロジェクトの成果を、原は「会社としての信頼維持」と表現する。そう、「維持」なのだ。完璧にやり遂げることが当然と見られる仕事。けれどそこには、たくさんの挑戦が詰まっている。「会社分割は、めったに経験することのできないイベント。その機会を得たことで、財務スキルはもちろん、『なんとしてでもやり抜く』という対応力も身についたと思う」。

2021年。NTTファイナンスは、NTTビジネスアソシエからアカウンティング事業の移管を受けた。提供できるソリューションの幅はさらに広がり、「NTTグループにおける財務・経理の中核企業」というポジショニングもますます鮮明になった。この環境は、原にとっても追い風だ。「多彩な経験を重ね、財務のプロフェッショナルとして成長する」。強みが明確になったNTTファイナンスだからこそ目指せるキャリアを、原は描いている。

写真:イメージ画像